茂(しげる)は言う
「手に入れたいなら勝つしかないだろ」
茂実(しげみ)は返す
「そうだけど……」
不満そうなその声に茂はいぶかしむ
何がそんなに気に入らないのか何を嫌がっているのか…
「勝つために俺達はここに呼ばれた
 勝たすために俺達はここにいる
 何故躊躇う?
 何を戸惑う?」
しばしの沈黙が流れた――いや、しばしなのか長い沈黙だったのか――彼らには時間の概念など全くなかった。
しかし、茂の心は今までに感じた事がない程答えを欲した。
まるで焦りに似たその感情、胸のモヤモヤを解消したいと願う気持ち
好奇心という気持ちを抑えきれなくなった頃に茂実はポツリと呟いた。
「目を貰うために勝たせてあげるのって変じゃない?」
期待外れの言葉に茂はガッカリし、好奇心を満たせなかった相手を非難するかの如く語気を荒らげ返した。
「そんな事かよ
 僕らは目を貰う為に彼を勝たせてやる
 単なるギブアンドテイクだよ
 それに彼を勝たせるのは僕らの役目だろ
 存在を否定する気かい?」
「そういうつもりじゃないけど……
 でも変じゃない?」
イライラは募る
何故コンナ奴ガ相棒ナンダ――
「じゃあ何なんだ!?
 そんな調子で彼が負けたらどうする気だ!」
彼らの眼下には勝利の報を待つ主と協力者達がサウナのような熱気の中一点に意識を集中させていた
「それでも"目"を貰う為に働くのって変だわ
 それに……目って必要なの?」
「……ッ!」
それは彼の人生で一番強い衝撃をもたらした。
言葉を失うぐらいに。
茂実の言う通り彼らに目は意味が無かった。少なくとも彼ら自身には。
目でモノを見たりしないのだ。
だが、ここで茂実の言い分を認めてしまうと今までの自分を否定してしまう。
茂は何とか立場を逆転させようとしたその時、彼らの眼下で人々の大きな気勢が上がった。
同時に担ぎ上げられる茂実
その時が来たのだ
「おめでとう。真面目に働いてはいなかったが、君は目を入れてもらえる」
----なんでこんなヤツが貰えるんだ----
不満は口にはしなかった。
ここは目出度い席なのだから。

「ありがとう」
目を入れてもらった茂美は最早役目を終えた達磨の風体であった。

「おめでとう。」
不満は口にはしなかった。
その声に幸せが詰まっていたから。