ばかなモノの話

作 ぶらすた~(※サムの旧ペンネーム)

 ある日のことでした。鉄の棒を持った旅人が、森の中に入っていきます。
 森に入ってそうたたないうちに、旅人は白い法衣を着た男と出会いました。
「そこの旅人さん、ここは魔物の住む森です。魔物に襲われると大変ですから、引き返したほうがいいですよ」
 男はそう忠告してきました。
「これはご丁寧に。でも俺は急がないといけないので」
 旅人は申し訳なさそうに言いました。
「ここを通りたいのですか」
「ああ、届けないといけない物があるんで」
 旅人は背負っているザックに、指を指します。
「そうですか…では」
 そう言うと、男は旅人の額に手をかざしました。そして、男は気がすんだのか腕をゆっくりとおろします。
「何があっても声を出さず、何があっても振り返らないでください」
「それはどうしてで」
 旅人は男に聞きました。
「今、わたしの力で貴方に結界を張りました。これで魔物は貴方に近づくことはありません。ですが、魔物の声にたいして振り返ったり,答えてしまうと結界の効力が無くなってしまうからです」
「ほぉなるほど」
 旅人は大きく頷きますした。
「では、よい旅を」
「ええ、ありがとう」
 旅人はお礼を言うと、男と別れました。

 旅人は森の中を無事に進んでいます。何事もなくこれたのは、法衣を着た男のおかげでしょうか。
 旅人は開けたところに出ました。そこには、沢山の大きなカボチャが実っています。
「カボチャ畑か?」
 そうつぶやくと、旅人はカボチャ畑を横切ることにしました。
 カボチャ畑に踏み入ってなかほどまで着たとき、旅人はあるモノを見つけました。それは、カボチャの山に押し潰されてる少女でした。
「大丈夫か」
 旅人は少女に尋ねます。
「見てわからない」
 少女は男を見上げます。
「いや」
「これが趣味でやってると思う」
「新しい遊びかと」
「…」
 少女は深くため息をつきました。
「お願い。助けてくれる」
 少女は旅人に助けを求めました。
「ああ、少し待っててくれ」
 旅人は背負っていたザックを地面に置くと、カボチャを退かそうとしました。だけど、カボチャはびくとも動きません。
「ふー」
「一番上のカボチャを割ってくれる」
「ああ」
 旅人は鉄棒を構えると、一番上に乗っているカボチャに突きをくらわします。
 鋭く、回転力のかかった突きはいともたやすくカボチャを粉砕させました。
「イヤーーー」
 粉砕されたカボチャは、少女に降りかかりました。
「すまん」
「いいわよいいから早くカボチャをどかして」
 少女は情けないとも、すねたともとれる声で言いました。
「わかった」
 旅人は早速、カボチャを退かしにかかりました。
 カボチャを退かし終えると、少女はすぐさま立ち上がりました。
「カボチャ嫌い、カボチャ嫌い」
 そう言いながら、少女は服の匂いをかぎます。
「うわっ、カボチャくさ」
 少女は眉をひそめ、体についてるカボチャの破片をはたき落としました。
「好き嫌いはいかんぞ」
「うー、別にいいじゃない。それより早くここから出よ」
 少女は旅人の背中を押し、せかします。
「ああ」

 カボチャ畑から出た二人は、一息ついています。
「きみ、これからどうするの」
「この森をぬける」
 旅人は、向かっている方向を指さして言いました。
「ふーん」
 それっきり、少女は一言もしゃべらなくなりました。そして一、二分たった頃でしょうか。
「ねぇ、きみについて行っていいかな。この森を案内するからさ」
 唐突に少女は、旅人に上目づかいで尋ねました。
「ああ、いいさ。だけど、どうしてだ」
「それは歩きながら説明するから、とっとと行きましょ」
 少女はそう言って、歩き始めました。

「フー、まったく災難災難」
 少女は旅人の前を歩き、道を案内しています。
「理由はね」
 少女は一瞬、旅人の方を見ました。
「前からここに住んでいたんだけど、居づらくなっちゃって。どこか別のとこに移ろうと思ったの」
「そうか……なら、荷物は」
 旅人は聞きました。
「これでだけで十分」
 少女は腰から下げている鞄を一叩きして、自慢げに言います。
「そういえば、ここには魔物が住んでるらしいが…襲われたことはあるか」
「ああ、その話聞いたことがある」
 少女は旅人の横に、行きました。
「でもさ、魔物に襲われてたらここにいないと思うよ」
 そう言って、少女は小さく笑いました。
「ふむ、なるほど」
 旅人は、つられて笑います。
「きみこそ、そんな話し知ってるのにどうしてここを通ろうとするの」
「村の者に、次の町はここを通ると早く着けると聞いたからだ」
「根性あるね~」
「いやそうでもないさ」
 旅人は、肩をすぼめます。
「ただ単に、魔物は理由もなく人を襲うと思わないと思ったからだ」
「へぇー」
 少女は旅人の顔を、覗きこむように見ました。
「変わってるね、きみ」
「そっちこそ、ここに住んでる変わり者だろ」
「それもそうか~」
 っと言って、少女は自分のおでこを叩きました。

 旅人と少女は話をしながら歩いています。
「そろそろかな」
「ほぅもうすぐか」
 しばら歩くと、森の出口が見えてきました。
「魔物は出ずじまいか」
「出て欲しかった」
 少女はいたずらっぽく笑って、旅人に聞きました。
「いや。会わないほうがめんどうがないしな」
「あっそう」
 少女はそう言うと、急に止まりました。それを見て、旅人も立ち止まります。
「でも、もう会ってるよ。このあたしに」
 少女は口の端を上げて笑いかけてきます。
「そうか」
 それだけを言うと、旅人は森の出口にむかって歩き出しました。
「あっあれ」
 少女は少しの間、立ったままでしたが、急いで旅人の後を追いかけました。
 旅人に追いつくと、少女は旅人の服のすそをつかみました。
「なんだ」
 旅人は少女のほうを振り向きました
「ねぇ、それだけ」
「そうだが」
 旅人は小首をかしげます。
 それを聞いた少女は、深いため息をはきました。それから、何かを言おうとして口を開きますが、思い止まって口を閉じます。
 旅人と少女は、もうすぐで森を出られるところまで来ました。
「住めるとこ見つかるまで、よろしくね」
 少女は旅人に手を差し出します。
「そういう意味で言ったのか」
 旅人は苦笑いを浮かべつつも、少女の手をつかみました。
「よろしく、だ」
「じゃとっとと、行こうか」
 そのまま、少女は旅人の手を引っ張ります。
「ああ。速く届けたい物もあるしな」
 旅人は少女に合わせて、早歩きをします。
「何届けるの」
「魔物退治に必要なアイテム、らしい」
「ゲッ」
 少女は顔をしかめると、旅人の手を放しました。
「神のいたずらだな」
 それを見て旅人は、笑って言います。
「うぅ~」
 少女はうなりながら、旅人を睨みました。
「しかし、ここに住んでる魔物が人を襲うなんてバカな話よね」
 そう聞く少女に対し、旅人は肩をすくめるだけでした。
 やがて、二人は森を抜け、町に向かって歩いていくのでした。